会津・漆の芸術祭2012 〜地の記憶 未来へ〜

会津・漆の芸術祭2012展示作品パノラマビュー
会津・漆の芸術祭2011展示作品パノラマビュー・ズームビュー

ソフト・サイト制作

福島県立博物館

DIRECTORディレクターコメント

赤坂館長

赤坂 憲雄(あかさか のりお)

 1953年、東京都に生まれる。東京大学文学部卒業。
現在(2011年)、福島県立博物館館長、学習院大学教授。
専攻は民俗学・東北文化論。東北一円を聞き書きのフィールドとして、野辺歩きの旅を重ね、埋もれた歴史や文化を掘り起こしながら、「いくつもの日本」を抱いた新たな列島の民俗史の地平を切り開くために、東北学の構築をめざしている。

会津・漆の芸術祭2012 〜地の記憶 未来へ〜
漆の力で、明日の福島をひらくために

東日本大震災から1年半の歳月が経過しました。
表面的には日常が戻ってきています。
しかし、そこかしこに、その日常がめくれた裏側に、癒えることのない記憶がいまも傷口をさらしています。
それでも、わたしたちは明日に向けて半歩でも足を踏みださねばなりません。
豊かな自然の恵みのもとに営まれてきた暮らしの風景は、ひとたび断ち切られました。
眼の前には、たくさんの課題が転がっており、答えはいまだ見いだされていません。

ただ、この会津の地のすみずみまで息づいている「漆」という存在が、答えにいたるための手掛かりを秘めているのかもしれません。
はるか縄文時代から、すくなくとも2400年以上の歴史を背負い、会津の地で使われてきた天然の素材。
自然の恵みとしてもたらされる接着剤にして塗料、そして画材でもある漆。
その利便性の高さ、また比較するものなき美しさだけでなく、いにしえの人々はそこに生命の神秘、生と死の循環、そして自然への畏敬といったものを感じていたらしい。
そのことは、会津・漆の芸術祭が歩んできたこの3年間のなかで、より明らかに、より深くわたしたちが学んできたことです。

だから、いま、漆の力を信じてみたいのです。
そうして漆の力を仲立ちとして、人と自然との関係を畏敬の念をもって結び直し、身の丈の暮らしの知恵や技をひとつひとつ回復しながら、豊かな福島の再生のために手を携えて働きましょう。
人は漆の樹に傷をつけ、その傷を癒やすように滴り落ちる樹液を、山から贈与される幸や恵みとして受け取ってきました。
そして、その漆によって彩色された器を祭りの庭に、神々への感謝をこめて捧げてきたのです。
そこに、ささやかな明日の福島を再生するための道行きが示唆されているのかもしれません。

この地の記憶を抱いて、漆の力を仲立ちに、福島の未来へ。
会津・漆の芸術祭は、たくさんの人々とその祈りを共有する場でありたいと願っています。

会津・漆の芸術祭総合ディレクター 赤坂憲雄